演説から

 豊川稲門会では2年間にわたり「大隈重信演説集」をテキストにして研究会を開いてきました。テキストを新しくするにあたり、前テキスト研究内容について区切りをつける必要性を感じています。ちょうど「福沢諭吉の学問の教えと10の教え」を学ぶ機会により、大隈候においても同じような趣旨のまとめはできないだろうかと思いました。しかし、2200にも及ぶ演説をまとめることは不可能であることに気づき、まとめるのではなく代表的な演説を選ぶことにした。

選定基準は以下の通り

  • 早稲田人にふさわしい。
  • 向上志向である。
  • 読んで元気になる。
  • 政治は除外する。(時代背景が現代と全く異なるため)

「ご承知の通り明治15年にこの大学が現れたのである。而してこの30年間に日本の文運、政治上、法律上、社会上の状態は非常に進歩したと同時に、この学苑の教旨そのものも次第に拡充されたのである。ここにおいてこの創立30年祝典を機とし、我が早稲田大学の教育の趣旨、即ち教旨を宣言する必要を感じたのであります。」

早稲田大学教旨

早稲田大学は学問の独立を全うし学問の活用を効(いた)し模範国民を造就するを以て建学の本旨と為す
 早稲田大学は学問の独立を本旨と為すを以て之が自由討究を主とし常に独創の研鑽に力め以て世界の学問に裨補(ひほ)せん事を期す
 早稲田大学は学問の活用を本旨と為すを以て学理を学理として研究すると共に之を実際に応用するの道を講じ以て時世の進運に資せん事を期す
 早稲田大学は模範国民の造就を本旨と為すを以て個性を尊重し 身家を発達し 国家社会を利済し併せて広く世界に活動す可き人格を養成せん事を期す

「生理学者の説に依ると、すべて動物は成熟期の5倍の生存力をもっておるというてある。そこで人間の成熟期は25歳というから、この理屈から推してその五倍,即ち125歳まで生きられる訳である。」

希望ある者は決して老いるものでない

「我輩の百二十五歳の長寿説を不思議がる人もあるが、決して不思議なことはない。人間は世のためとか人のためとかに何かして働こうという代り、もしも人生に希望さえあれば老朽者となる恐れはない。その代りもしも人生に希望がなくなると生きているほど辛いものはない。

吾輩はどうして修養するか

「世の中の事はなかなか思うように行くものではない。失敗もする。挫折もする。…人間愚痴をこぼす様ではおしまいである。失敗は世の常、煩悶するにも及ばぬ。悲観する必要もない。この難関を切り抜ける気力がなくてはならぬ。…吾輩はこれを名づけて快楽主義といっている。」「七たび転んでも八たび目に起きればよい」

<女性論>婦人の向上心を養え

でもこの向上心がない限りは決して社会も国家も進歩して行くことが出来ない。故に今日の婦人教育者は、よろしく日本婦人が虚栄に流れずに向上心を養成してゆくことがも最も肝要である。

小安に安んぜず奮闘一番せよ

「ちょっとした物でも発明するともう自分は大発明家にでもなったように自慢する。少し気の利いた新会社でも興すともう自分は成功したかの如く思って小安に安ずる。大勇猛進がないのである。青年はすべからく奮闘一番して不生産的な閑事業や、さもなくば投機的の暴利を貪り望むが如き悪弊を脱して盛んに新方面に活動してもらいたい。」