汽笛一声

このページにまとめた鉄道開業の内容は、NHK番組「英雄たちの選択」「ニッポンに蒸気機関車が走った日」と伊藤之雄著「大隈重信」を参考にまとめたものです。大隈候が偉業の鉄道敷設から現代にも活用できる手法を学びたいと思います。

1972(M5)9月12日

日本で初めて鉄道が開業した。開設にあたっては大隈重信(当時30歳前半)と伊藤博文(20歳代後半)奔走している。

佐賀藩は

佐賀藩は西洋技術導入に積極的で鉄を作る反射炉や大砲を自前で作っていた。

安政2年、鉄道模型を完成

見事、試験運転に成功し、皆、絶賛する。佐賀藩の若きホープ大隈もこれにショックを受けた。

伊藤博文は?

伊藤は長州5人と鎖国を破りイギリスに密航している。1863年、伊藤はイギリスに留学する。この時、イギリスの繁栄する姿や巨大な鉄道網を見ている。。

1867(慶応3)米国公使館書記官ポートマンは旧幕府から江戸・横浜間の蒸気機関車敷設と経営の免許を得ていたので、1869(M2)1月新政府に対して確認を求めてきた。このとき大隈は副知事であり、翌月、「日本人民の力で敷設する」との理由で新政府は不許可の回答をした。

1869(M2)7月大隈は大蔵大輔(現在の財務省次官)、伊藤は大蔵少輔(財務省局長)に就任した。このとき明治政府はまだ不安定で社会は一揆など各地で起きていた。全国の人身を統一するには鉄道が一番良いと一致した。

資金は1000億円

1869(M2)10月、鉄道建設建議書を政府に提出。大隈伊藤は鉄路制作決定の全権を委任される。予算は1000億円で当時の国家歳入の半分に相当する。

西郷と大久保が大反対!

両名は「少ない財源は欧米列強に対抗する軍備に浮かうべき。」と反対する。「建白書」が提出され、世論も大反対した。鉄道建設予算はゼロになった。

大納言・岩倉具視に直訴

「大日本外交文書」に当時の検討が残されている。1869(M2)12月、西郷伊藤はイギリス公使のパークスを伴い「コメ飢饉(M2)の際には鉄道がコメを緊急に運べる」ことを訴え、大納言岩倉具視から了承を得る。

投資家・レイの提案

イギリス公使パークから紹介されたイギリス人投資家レイは投資家仲間から個人的な資金を貸すと提案してきた。大隈伊藤は「個人的に貸すならば、日本に植民地化されないでろう」と内密に英貨100万ポンド(当時の488万両)利率12%、鉄道の全収入と関税を担保として、2年間据え置き、3年目から毎年10万ポンドで償還し12年目に全額償還するという約定を交わした。

ところが、契約はレイに全権を与える形になっていた。レイは私募債ではなく日本政府の公債として市場に利子9%、総額200万ポンドを募集し、差額の3%を私利しようとしていた。

内密約定を暴露!

契約を断られたアメリカのロングは内密の約定を暴露した。この事実は瞬く間に日本中に知られてしまう。大隈伊藤は「売国奴」として非難され、暗殺の危機にあう。レイの契約違反も発覚し、1870(M3)6月契約破断にし暗礁に乗り上げてしまう。

イギリスの銀行から融資を獲得

伊藤大隈は以前から親交があったイギリス公使パークスに相談した。パークスはイギリス政府に紹介状を書き、イギリスの銀行(オリエンタルバンク)から融資を獲得し、しかも経営権は日本が持つという条件で契約ができた。このころイギリスは世界の植民地に費用がかかり過ぎということが問題になっていた。そこでイギリスは有利な貿易相手国を探していた。

レイとの契約は、オリエンタルバンクが代理者となり訴訟を行い、示談をまとめ、違約金を払って契約を解除した。大隈や伊藤は慣れない借款契約で大きな失敗をしたが、比較的少ない損失で日本の主導権を回復できた。このような失敗体験を経て、新政府は外国と借款契約を結ぶことの厳しさや鉄道敷設・運航について学んでいった。

調達資金は100万ポンドだが

反対する世論を抑えるため「財政再建」に70万ポンド、鉄道建設に30万ポンドにした。鉄道計画は縮小することになった。

西郷大久保はさらに反対する。

品川の薩摩藩屋敷が立ち退きを拒否した。兵部省や漁民も移転を拒否した。大隈伊藤はなすすべがなくなる。

イギリスに密航経験のある井上勝は海上を走らせるアイデアを提案する。陸が駄目なら海上に線路を作る新橋横浜間29㎞のうち10㎞が海の上。

列車には明治天皇も乗車

疾走する陸蒸気に人々は熱狂し、鉄道は文明開化のシンボルとなる。反対していた大久保も絶賛した。

明治天皇が勅語を発する

天皇は「全国に敷設することが望ましい」


1874(M7)5月 大阪・神戸間鉄道開業、1877(M10)2月 京都・大阪間鉄道開業、1880年代後半以降、民営鉄道建設ブーム、1889(M22)7月 東京・大阪間開通、
1895(M30)には全国に鉄道敷設される。